2012年12月11日火曜日
第4回空き地歌会 スピンオフ 評11&14&15
11 ほどかれるゆびを待ちつつ結び目をつくる月日に若葉雨ふる(紗都子)1票
【野比益多 評】------------------------------------------------------------------------------
じっくり読むと、いろいろな読み方ができる歌だなと思いました。
いちばん最初に思ったのは、恋愛かなあと。
主体は文体や内容的に女性かな?ととりました。
なので、主体が思いを寄せる男性Aがいて。
その男性Aにはまだほどかれていないゆびの女性Bがいる。
そちらの関係が終るのを待ちながら、
主体は男性Aとの間に結び目(絆)をどんどんつくっていく。
でも「若葉雨ふる」というところで、
主体はその月日にまったく後ろめたさは感じていない。
という怖い読み方をしておもしろいなあと思いました。
でも、また別の読み方もできるなあと。
主体は小さな子どものお母さんで、
小さいころは手をつないで歩いていたけれど、
成長したらそのゆびはほどかれるんだろうなあ。
と思いながら、結び目(絆)をつくっていく。
「若葉雨降る」というのも、こどもの成長をさしている。
「ゆび」が漢字でなくひらがなであることからも、
親子説が有力な気がしますね。
どちらにしても考え抜かれてつくられているからこその
読み解いていくおもしろさがあり、
この一首を選ばせていただきました。
あ、でも動詞が3つ出てきて少し煩雑かなあとも思いました。
「待つ」「つくる」「ふる」。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
14 生きるとは結び繋げてゆく事と刻み込まれた螺旋が騒ぐ(本間紫織)2票
【住友秀夫 評】-------------------------------------------------------------------------------
機械のきしむ音がした。そちらへ目を向けてみると螺旋状にネジを切った部品が動力を伝え機械が動いている。
それを見て作者は「人生には職場や家庭などあらゆる所で人と人とのつながりが不可欠で、
後の世代に知識・経験・血・心等を伝えていく役割を必然的に負っている。」と感じたのではないでしょうか。
結句の「螺旋が騒ぐ」はそのような役割を忘れがちな我々に「気づきなさい」と機械が訴えているように思いました。
定年まであと三年半の私には「お前はそのような役割を果たしてきたか」と問われているようでもあり
また励まされているようにも感じました。
作者の方、いい歌をありがとうございました。
【土屋智弘 評】-------------------------------------------------------------------------------
一読、二重螺旋構造を持つDNAのこととわかる。命を繋げてゆくためのシステムとしての躍動感を表現している感じがよくて選んだ。ただ、テンポよくDNAがやるべきことを並べているが、動詞が多くて騒々しい印象が強くなっているのが惜しい。そこが表現したい所なのかもしれないが、もう少し落ち着いた表現ができればなおよいと思う。と言いつつ、スピンオフ31首の中では一番惹かれた歌である。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
15 結んではひらく約束ほどけなくなってしまったなら手を打って(なまにく)2票
【晴見奏司 評】------------------------------------------------------------------------------
不思議な魅力を持った歌だと思う。
童謡のむすんでひらいての様に
一首の中に延々と繋がっていく様なイメージを持った。
(むすんでひらいて手を打ってむすんでひらいて手を打って…の様な)
人は生きている内にどれほどの約束を交わすのだろう。
縁の糸も時には絡む事もあると思う。
手を打つと言うのは必要な対策を取ると言う
言葉そのままの意味もあるのだろうが
私の中では手を打つと言う行為そのものに神聖なイメージがあって
かしわ手を打つ事により邪気を払って
心機一転また約束を結び直しましょうと言った
前向きな歌だと解釈した。
31首の中では一番目についた歌である。
【天国ななお 評】-----------------------------------------------------------------------------
誰もが知っている童謡(フレーズ)をモチーフにしてしまうと、逆にそこから広げられなくなってしまうこともありますが、これはとてもよく作られていると関心しました。ほとんどそのままなのに約束をはさんだことで全然違う世界にしてしまう。
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