2014年3月24日月曜日

第6回 空き地歌会 自由詠 選歌結果

( )内が作者名です。
《選》のところにあるのが、その歌を選んだ方のお名前です。

A 選ばなかったほうの未来を思う日の玉ねぎ三個粗みじんに処す(倉野いち)
  《選》秋山生糸 須田まどか たえなかすず 飯田彩乃 小川千世

B 愛しさをこぼさぬようにおくるみを抱いて母は腕で重ね着(住友秀夫)
  《選》大木はち 天国ななお

C くちづけのまつげに降りた結晶のうつくしさとか伝えそびれる(桔梗)
  《選》内山晶太 大平千賀 山口ヤスヨ 小川千世

D ドーナツの穴に天使がいるように不在のしめす優しさを噛む(秋山生糸)
  《選》黒崎立体 須田まどか 住友秀夫 飯田彩乃 天国ななお 
     野比益多 月夜野みかん 

E まっすぐに立ってるようで少しだけ内股なんだ 脱がせて気づく(天国ななお)
  《選》野比益多 月夜野みかん

F 「今度タコ入れやがったら承知しねぇ」赤ウインナさえ仇か今は(山口ヤスヨ)
  《選》秋山生糸 大木はち 野比益多

G おたがいの口真似をしているうちに積荷をおろす春という船(本多響乃)
  《選》相田奈緒 大平千賀 倉野いち 黒崎立体 須田まどか 山口ヤスヨ
     飯田彩乃 野比益多 小川千世 桔梗 佐藤真美

H 路線図は蜘蛛の巣めいてつかまれば死をまつばかり夜の東京(大木はち)
  《選》内山晶太 住友秀夫 たえなかすず 佐藤真美

I 雨あがりの三角公園でねむる きみが今年も誕生する日(高橋たまき)
  《選》本多響乃 桔梗

J 前世で並んで咲いていた花と午後の電車でまた隣り合う(黒崎立体)
  《選》相田奈緒 内山晶太 倉野いち たえなかすず 高橋たまき 
     山口ヤスヨ 天国ななお 本多響乃 桔梗 月夜野みかん 

K 水であることを忘れて光ってる海を見つけて音は消えゆく(野比益多)
  《選》大木はち 倉野いち 黒崎立体 住友秀夫 高橋たまき

L 街頭の光の傘を過ぎながら我慢強かったのは君のほうだと(大平千賀)
  《選》相田奈緒 内山晶太 倉野いち 飯田彩乃 本多響乃 小川千世

M アメイジング・グレイス流れ雨音が決意止めても 二通目へ、いざ(たえなかすず)

N 含羞の捨てどころなく胸につまる夕映えを吐きにゆくだけの旅(内山晶太)
   《選》秋山生糸 大木はち 大平千賀 黒崎立体 須田まどか 本多響乃

O おそろいのセーターに星 自転車は道路のひかりにつつまれて消ゆ(佐藤真美)
   《選》大平千賀

P 手違いのようなうれしさ持て余し春の沼地にふたりで座る(相田奈緒)
  《選》秋山生糸 倉野いち 黒崎立体 須田まどか 高橋たまき 山口ヤスヨ
     飯田彩乃 天国ななお 野比益多 桔梗 佐藤真美 月夜野みかん

Q 水を飲み干すように好きになったせい(さざなむよさざなむよ)きらきら痛い(月夜野みかん)
  《選》秋山生糸 内山晶太 住友秀夫 たえなかすず 本多響乃 佐藤真美 

R 適切なフローを踏んで放りだすおとなの奥歯 やはり銀色(小川千世)
  《選》相田奈緒 高橋たまき 天国ななお

S パズルピースのやうなる日々を敷き詰めて一枚の画(ゑ)にたどり着かない(飯田彩乃)
  《選》大平千賀 住友秀夫 たえなかすず 高橋たまき 山口ヤスヨ
     小川千世 桔梗 佐藤真美

T 思うほど食べられないと箸を置く死臭漂う蟹食べ放題(須田まどか)
  《選》相田奈緒 大木はち 月夜野みかん


2014年3月13日木曜日

第6回 空き地歌会 自由詠 詠草

第6回空き地歌会3/21(金)の詠草が20首揃いました。

★参加者のみなさまへ
ご自分の歌に間違いがないかご確認ください。

★詠草のみのみなさまへ
3/19(水)24:00までに5首選5首評を
野比までメールでお送りください。

★参加者以外のみなさまへ
詠草についての評や感想は、歌会当日までお控えいただけると
ありがたいです。
当日歌会時のtwitterでの評や感想は大歓迎です!
よろしくおねがいいたします。

自由詠 全20首----------------------------------------------------------------------

A 選ばなかったほうの未来を思う日の玉ねぎ三個粗みじんに処す

B 愛しさをこぼさぬようにおくるみを抱いて母は腕で重ね着

C くちづけのまつげに降りた結晶のうつくしさとか伝えそびれる

D ドーナツの穴に天使がいるように不在のしめす優しさを噛む

E まっすぐに立ってるようで少しだけ内股なんだ 脱がせて気づく

F 「今度タコ入れやがったら承知しねぇ」赤ウインナさえ仇か今は

G おたがいの口真似をしているうちに積荷をおろす春という船

H 路線図は蜘蛛の巣めいてつかまれば死をまつばかり夜の東京

I 雨あがりの三角公園でねむる きみが今年も誕生する日

J 前世で並んで咲いていた花と午後の電車でまた隣り合う

K 水であることを忘れて光ってる海を見つけて音は消えゆく

L 街頭の光の傘を過ぎながら我慢強かったのは君のほうだと

M アメイジング・グレイス流れ雨音が決意止めても 二通目へ、いざ

N 含羞の捨てどころなく胸につまる夕映えを吐きにゆくだけの旅

O おそろいのセーターに星 自転車は道路のひかりにつつまれて消ゆ

P 手違いのようなうれしさ持て余し春の沼地にふたりで座る

Q 水を飲み干すように好きになったせい(さざなむよさざなむよ)きらきら痛い

R 適切なフローを踏んで放りだすおとなの奥歯 やはり銀色

S パズルピースのやうなる日々を敷き詰めて一枚の画(ゑ)にたどり着かない

T 思うほど食べられないと箸を置く死臭漂う蟹食べ放題

2014年2月3日月曜日

第6回空き地歌会 抽選結果

昨日、スペシャルゲストの内山晶太さんに、
抽選をしていただきました。
じゃじゃーん。





















結果は、
A枠----会場参加
02 @sorane3 須田まどか
04 @h_sumitomo 住友秀夫
06 @tamana47no 高橋たまき
07 @o_o_ichi 倉野いち
08 @kurosakirittai 黒崎立体
11 @hachidx 大木はち
13 @aidana_t 相田奈緒
14 @kiito25 秋山生糸
17 @yasuyoyamayama 山口ヤスヨ
19 @suzusuzu2009 たえなかすず
20 @Ohira_ka 大平千賀



B枠----詠草のみ
05 @reykjavik12 佐藤真美
08 @ogawachiyo 小川千世
12 @potemikan09 月夜野みかん
15 @chattenoire_k  桔梗

当たった方、おめでとうございます。
はずれてしまった方、申し訳ありません。

当たった方は、DMにて空き地歌会アカウントまで
1. PC から送受信可能なメールアドレス
2. お電話番号(ツイッターやメールで連絡が取れない場合にのみ使用します)
をお知らせください。
※全員のDMが揃ってから歌会の詳細メールをお送りすることになりますので、
お早めにいただけるとありがたいです。


A枠抽選結果画面 








B枠抽選結果画面 



2014年1月31日金曜日

第6回空き地歌会 応募者一覧


応募者多数となりましたので、抽選とさせていただきます。
本当はみなさまにご参加いただきたいのですが、ごめんなさい。
抽選結果は、2/3(月)に発表させていただきます。
会場参加11名、詠草のみ4名となります。おたのしみに!

応募したはずなのにこちらに名前のない方は、
2/1(土)24:00までにツイッターアカウント(@akichi_kakai)まで
リプライでご連絡ください。




A枠----会場参加希望

01 @tankana 檀可南子
02 @sorane3 須田まどか
03 @takeuchiryo 竹内亮
04 @h_sumitomo 住友秀夫
05 @kanae_izm 泉かなえ
06 @tamana47no 高橋たまき
07 @o_o_ichi 倉野いち
08 @kurosakirittai 黒崎立体
09 @tsutanuma 沼尻つた子
10 @satocott  高松紗都子
11 @hachidx 大木はち
12 @yama_shina 山階基
13 @aidana_t 相田奈緒
14 @kiito25 秋山生糸
15 @168ni  河合弘枝
16 @hatataku2002 畠山拓郎
17 @yasuyoyamayama 山口ヤスヨ
18 @if_azumi 梓見
19 @suzusuzu2009 たえなかすず
20 @Ohira_ka 大平千賀
21 @mozudono 奈良
22 @umiya_tanka 清瀬うみや
23 @Bombori0519 ぼんぼり

 

B枠----詠草のみ希望

01 @aoitukikage あおい月影
02 @hasnan_mhd 魚住蓮奈
03 @fabfourcomicall ショージサキ
04 @mushitake 虫武一俊
05 @reykjavik12 佐藤真美
06 @tnkmsr 田中ましろ
07 @ammytanka あみー
08 @ogawachiyo 小川千世
09 @Ejshimada 泳二
10 @MEATsachi  御糸さち
11 @kotonoha31 琴平葉一
12 @potemikan09 月夜野みかん
13 @tooorisugari 黒夜行
14 @renga57577 のの
15 @chattenoire_k  桔梗
16 @sabajaco じゃこ
17 @kuroshinju 黒蝶
18 @sakrako0304 嶋田さくらこ
19 @ushiryu31 牛隆佑
20 @spiralroom 廣野翔一
21 @yuami_sachi_333 実山咲千花

敬称略

2014年1月23日木曜日

第6回空き地歌会 募集開始

■募集枠について

今回はこれまでと募集方法を変更します。
参加枠を【A枠---会場参加】【B枠---詠草のみ】の2つとし、同時に募集します。
※申し訳ありませんが、どちらかにしか応募できません。
【A枠---会場参加】----------11名(当日会場へ来て参加できる方)
【B枠---詠草のみ】----------4名(当日会場へは来ずに詠草のみで参加する方)
ここにスペシャルゲストの内山晶太さんと
空き地歌会スタッフが加わり、
会場参加者15名 詠草のみ5名 計20名となります。

■募集期間について

1/23(木)~1/31(金)17:00

※応募者多数の場合は抽選とさせていただきます。
2/3(月)に抽選結果をお知らせします。

■応募の仕方(※かならずTwitterから応募してください)

必要事項を記入して空き地歌会アカウント( @akichi_kakai )へ
参加希望のリプライをしてください。

必要事項:
1 参加枠AorB
2 筆名
3 ハッシュタグ #空き地歌会6
4   空き地歌会ブログのURL

例1)A枠---会場参加に応募する場合-------------------------------------------------

@akichi_kakai 第6回空き地歌会【A枠---会場参加】希望。(筆名:○○○○) http://akichikakai.blogspot.jp/2014/01/6_23.html #空き地歌会6

例2)B枠---詠草のみに応募する場合-------------------------------------------------

@akichi_kakai 第6回空き地歌会【B枠---詠草のみ】希望。(筆名:○○○○) http://akichikakai.blogspot.jp/2014/01/6_23.html #空き地歌会6

2014年1月22日水曜日

第6回空き地歌会 開催日決定



第6回空き地歌会は、
スペシャルゲストに内山晶太さんをお迎えします!
日程は、3/21(金・祝)15:00~(開場14:30)

募集などの詳細については、
また後日ツイッターやこちらのブログで告知しますので、
もう少々お待ちください。
みなさまのご参加をお待ちしております。
※これまでのように募集枠を三段階には分けない予定です。

★★ 内山晶太さんプロフィール ★★
1988年、第十三回短歌現代新人賞受賞
2012年、第一歌集『窓、その他』刊行
2013年、第57回現代歌人協会賞受賞
「短歌人」「pool」同人

2013年4月18日木曜日

第5回空き地歌会 山崎修平さん全首評

山崎修平さんの全首評です。


A そよ風の裏切りにより花びらは着地するほかなかったんだよ
そよ風の裏切りによって着地ということは、花が落ちたということでしょうか。より「落ちてしまったのだ」という気持ちを出したい歌ですよね。着地という言葉がどうも引っかかってしまって、宇宙から帰って来た人の「着地」とか、飛行機が「着地」ならナルホドと思うのですが、花びらの「着地」というと強風で(かなり強い強制力で)花が振り落とされたような印象を持ちました。そよ風だけに。優しい歌だと思います。

B お隣のケンカを夜ごと聞かされる私の罪は何? 沈丁花
沈丁花に語りかけているのでしょうか?お隣のケンカを夜な夜な聞かされるのは確かに苦痛です、近所付き合いもありますから、苦情もおおっぴらには言えない、それを沈丁花に語りかけているのでしょうか。すんなりと「ああ、そうだよな」と言葉を飲み込んでしまったあとに、最後の「沈丁花」というフレーズが、この場合本当に部屋に沈丁花があるのだろう、とは思えるのですが、その背後に隠された奥行き、広がり等が、すんなりと意味が取れるだけに分かりづらかったです。率直な歌だと思います。

C 折れさうな身体のお兄さんの手に仕事の都合といふ花言葉
折れそうな身体のお兄さんはいますね、街中に。今はもう乗りませんが、満員電車に乗ると、確かにお疲れの方が特に若いお兄さんがいます。その状況を的確に描写した歌だと思います。確かに、こういうお兄さんに言葉を付与したい。何かで言い表したいとは思います。つまり憐憫や同情ではなく、言葉にすることにより、近接性が得られる、一般化されるのでしょう。それを「花言葉」と言い表した。花言葉は全然知らないのですが、花それぞれにあるのですよねきっと、疲れきったお兄さんを言い表す花言葉は今日から「仕事の都合」と呼びたくなります。アイロニーも感じます。

D スギ花粉噴射スプレー目と鼻に ヒロ先輩に卒業祝い
ヒロ先輩一体なにしたんですかね?スギ花粉噴射スプレーなるものを目と花に噴射されているのですからね、相当な事をしでかしたんですよね。周りから好かれていると取りました。一応「先輩」と敬称付いていますからね。ただヒロ先輩からしてみれば、結構辛いですよね。胡椒ならすぐにクシャミでますからね、面白い画になると思うのですが、スギ花粉噴射スプレーは即時性なさそうですよね、2、3、年経ってじわじわと花粉症になりそうですよね。うーん。ただ、ヒロ先輩悪い奴じゃなさそうだな。

E 桜舞う恋を奏でる曲の音と香り残して君に届けと
恋を奏でる音と香りを残して届くのは「君」への想いなのでしょう。音や香りと共に(力を借りて)ではなく、音や香りは残して、純度の高い想いの部分だけが相手に届くように、と。「君」への想いの深さ、純粋さや、潔さも感じられる歌だと思います。

F 営業が出払った午後事務員のまどろみのなか睡蓮ひらく
まどろみと睡蓮がかかっているのですよね。営業さんが出払ったあとに微睡んでいるんですよね、うーむ。これは「営業さんが出払った午後→まどろみ→睡蓮が開いた」という事でしょうか。だとするとまどろんでいる人は睡蓮が開いた事を確認出来ないですから他の第三者が確認しているんですかね、「あ、睡蓮ひらいた。あいつ寝てるわ!」って。そう考えるととても面白いと思いました。

G 鮮やかな色響かせて咲き誇る好きという花降りそそぐ君
鮮やかな色とは何でしょう?とまず考えて、鮮やかな色という明確な基準が自分には無いので、例えば何かの色が「鮮やかだ」とは思いますが「鮮やかな色」という概念がないので、その色を響かせる、ときて、ん?響かせるということは共鳴して鳴り響いているのですよね、鮮やかな色が響いている、何だか抽象画のような世界ですね。そして「好きという花」が「降りそそぐ君」で、頭がグラングランしてきて、歌意が取れなくなってきました。「君に降りそそぐ」ではなく「降りそそぐ君」ということは「君」が降りそそいでいるとも取れますよね。好きという花は誰が何を好きと言っているのでしょうか。花が好きといったとも取れますよね。不思議な魅力がある歌です。

I 咲くことのない花ですとわたされた石をあなたは窓辺にかざる
たまに海外からの土産物でおかしなもん渡されて、現地のシャーマン(呪術師)の祈りが込められたモノとかで、捨てると呪われそうだし、不燃物か資源か分からないし、玄関先に飾っておくのだけども、友人が来た時に必ず「これは、何?」「槍だけど」ってなる。日本に住んでいる時に、相手に渡すものはいつの間にか常識ってもんに、限られてしまって、デパートで売っているものとか、花とか、指輪とか、決まりきったものになっている。だけども、この歌の場合、「咲くことのない花」として「石」を「わたされている」例えばドングリでも道に落ちている石でも、子供の頃の宝物には誰しも大人になって赤面するものだけど、この「わたした」人は「石」を「花」として(つまり、贈り物として広く一般に市民権を得て認知してされているものとして)半分冗談に、半分本気で言っているのだろう。そしてこの「花」の受け取りて手はそれを贈り物=花として認め、かざっている。素敵な歌です。大好きですこの歌。って詠み手に三回言っておいてください。

J 花に降る雨の静けさきらきらといのちほどけてゆくさくらばな
きらきらがちょっとうーん。何でしょう。嫌な言葉ではないのですが、「静けさ」と「きらきら」が武田信玄とくまモンくらいのどちらも好きなんですが、両者がいると「え?」ってなってしまうのです。下の句の いのちほどけてゆくさくらばなも好きですし、そのさくらばなという日常使わない言葉が詩情を出しているだけにどうしても、きらきらじゃなければダメなんだという理由が見つかりませんでした。下の句は好きですよ。

K 守っても守りきれないものがある カーネーションがシーツに咲いた
良くわかりませんでした。守っても守りきれないものがある。ということは相当な力が及んでいるのだと思いますが、下の句のカーネーションがシーツに咲いた。は自然描写、あくまでも自然現象として咲かされたではなく、咲いたですよね。その整合性が気になりました。

L ひらひらとさくら花びら花筏めだかの子らはお遊戯やめた
リズムですよね。リズムが素敵ですよね。このリズムのおかげって大きいなと思うのは、一つひとつ単語を見て行くと「さくら」「花びら」「花筏」「めだかの子」「お遊戯」と「花」という括りはあるのだけど、単語単独の強さで勝負ではなくて、繋がって全体で意味を成すと言うか、アホな例えで申し訳ないけれど、戦隊ヒーローものって5人組で、まあ赤がリーダーでピンクは女の子って決まっているけど、怪獣はたいてい一匹で地球に降り立つのですよね。5対1じゃ不公平じゃないか、ってならない。それは5人がそれぞれの長所を出し合って、危機を突破するからなんですよね。この歌を口に出すと、単語でぶつ切りにされた言葉をからエキスなようなものが染み出てきておでんのように全体で一つのリズムを生み出していて、良い歌だなあって思うのですよ。ええ。

M 吹く風に枝垂れ桜はゆれておりリズムは淡い1/f
1/fを知らなくて、グーグルで調べるのもどうかなと思ったのですが、この歌の肝が1/fだとしたらこの1/fに至る前の言葉と、すこし乖離しているのではないかなと思いました。枝垂れ桜はゆれており というフレーズは発音すると気持ちいいですね。好きです。

N さいたなら枯れてゆくだけ心咲さんさかなくていいこころなんかを
心咲さんって「こころさかさん」ですかね。すると前半の心咲さんと最後のひらがなでの、こころなんかをは意味合いが異なると言う事ですよね。うーむ。最初のひらがなの、さいたならと心咲さんも異なる。うーむ。思うに、(あなたへの)感情は満たされたなら(さいたなら)あとは枯れてゆくだけなのだから、こころという言葉の範疇に留める必要は無いのだよあなたへの感情は、ととりました。詩情がありますよね。独特です。この「sa」という音節も好きですね効いてますよね。「sa」って発音はすぐに消えてしまいますよね。「ma」なんかと違って。言葉って凄いなと思います。この歌も。

O ほろよいのお花畑で落ち合ってこのまま二人どこか消えたい
ほろよいのお花畑ってのは人間が酔っぱらっているのか、お花畑が酔っているのかってなりますよね。どっちなんでしょう。深大寺植物園のバラ園とか見ているとお花畑が酔っているな、って思います。ほろ酔いということは、歩くことも立つことも出来ないって訳じゃない、ちょっと気持ちよくなって、歌とか唄ってしまう、それくらいの酔いなのでしょう。「このまま二人どこか消えたい」のだから、やはりお花畑が酔っていて、その酔いの力、勢いを借りてという果たせぬ感情を、という感じなのでしょうか。「落ち合って」って良いですね。今、落ち合ってって言いますかね。新宿区に「落合」ってありますけど、神田川が落ち合って落合なんですね。そう言えば「待ち合わせ」も使わなくなったな、携帯電話でピっですもんね。うーん。「落ち合って」。大事な人なのでしょう。落ち合う相手は。

P 口々に春うたうべく咲く花のひとつを選りて耳もとに挿す
春らしい歌ですよね。挿すと漢字で書くとどうしても「ぶすっ!」というイメージがわいてきます。リズムも言葉の運びも好きなのですが。

Q 花びらを涙でつけて待っている 遠くからでも気がつくように
演歌のような歌ですよね。実際にいそうでいないですよね、花びらを涙でつけて待っている人。コミカルなのですが、至って真剣に花びらを付けている。遠くから気づいた人がどういう反応をするのでしょう。僕なら笑ってしまうかなあ、うーん。何で泣いているのでしょう?

R 桜たちおかえりなさい旅ならばかなたの春よいってらっしゃい
うーん。来年の春に桜の花が咲くまでのしばしの旅へいってらっしゃいということでしょうか。非常に淡くて描写が素敵な歌です。

S 薄桃の君がまっすぐ行けるよう道しきつめる花びらになる
桃って上手く皮剥けないんですよね。自分で桃の皮剥くと分かりますが、原型留めないし、果汁で手が汚れるし、あの産毛や色つや、あれは人間みたいですよね。そう考えると「薄桃の君」という描写分かりますね。傷つき易い、というよりは、「花びらになる」モノ(人)は傷つけたくないのでしょう、薄桃は。花びらで守るのでしょう、「まっすぐ行けるよう」に。聖母マリアのようです。

T この岸がどちらがわでもかまわない空ににじんでゆくさくらばな
この世とあの世でしょうか。下の句のひらがなが透明感があって、異世界へ誘うような響きがありますよね。浮遊感がある。好きな歌です。




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